【韓国】貸切列車ツアーに参加してみた!

日本には鉄道を使ったツアー旅行が様々な旅行会社から出ているが、韓国にももちろんそういった鉄道を活用したツアーがある。韓国の場合は旅行会社が主催するものと、鉄道会社である韓国鉄道公社KORAILがKORAIL観光開発という部門で行っているものがある。

今回はいくつかある列車ツアーの中から、ソウル発着で太白山を一周して戻ってくるという1日ツアーに参加した。
道中、要所要所の駅に立ち寄り、自由行動となるツアーであった。その様子をお届けする。







なお、KORAIL観光開発が主催するツアーは韓国の住民登録番号や電話番号が必要で、残念ながら一般の外国人は簡単に参加することが出来ない。日本の代理店からのツアーも参加出来るもので形として出ているものはヘラン号くらいではなかろうか。
今回は知り合いの韓国の方に予約をして頂き、ツアーに参加することが出来た。
ある土曜日の朝6時、ソウル駅3階にある専用ラウンジ付近に向かうとすでに人が集まっていた。
簡単なデスクの上に1グループずつまとめられた行程表とチラシが並んでおり、自分の名前が書かれたものを受け取る。これで受け付け完了らしい。特に名簿で確認するわけでもない。受付終了時刻までにデスクに行程表が余っていたら「来なかった」ということにするのだろう。

受付の人が声高に説明をしているが、どうやらトイレは済ませて置けということであったり、道中が長いので飲み物や食べ物を予め準備しておくようにというような内容だろうと勝手に推測する。


今日のツアーの予定はソウル駅を出発して東に向かい、京元線・中央線・太白線・嶺東線を経由して再びソウル駅に戻ってくる。

6:35 ソウル駅 出発
7:00 清凉里駅 停車
8:04 楊平駅 停車
8:47 原州駅 停車
9:35 堤川駅 停車
    ここまではすべてツアー参加者を乗車させるためだけの停車で、堤川(ジェチョン)駅を出発した時点でようやく参加者が全員そろう。
11:23 杻田駅 到着 観光停車   
11:53 杻田駅 出発
12:49 承富駅 到着 観光停車
14:21 承富駅 出発 
14:34 汾川駅 到着 観光停車
16:00 汾川駅 出発
17:46 豊基駅 到着 観光停車
19:26 豊基駅 出発
    観光終了、帰路に着く。
20:04 堤川駅 停車
20:45 原州駅 停車
21:23 楊平駅 停車
22:23 清凉里駅 停車
22:50 ソウル駅 到着

今回はソウル駅から乗車し、ソウル駅まで戻ってくることにしているので、実に16時間半程のツアーである。

出発20分前に旗を持った添乗員の一声でぞろぞろと参加者たちがホームへ降りていく。最後尾から付いていきながら客層を見ると、ほとんどが年配の方々でたまに小さな子供を連れた家族がいる。
ホームに止まっていたのは「八道市場観光列車」と呼ばれる特別仕様のムグンファ号で、車体が青色の専用ラッピングに包まれている。八道とは朝鮮半島を8つの道に分けたことから来ており、各地で開かれる市に向かう列車というイメージが強い、特定の運用を持たない臨時列車である。市があるところならどこにでも行くので、観光列車の類の中では唯一韓国中に運行される列車である。正に地方の名産品を買い求める為の列車であるということは、最も安価に地方貢献する観光列車だと言える。列車の中は特にこれと言った改装はしておらず、一般列車となんら変わらない。

昔カフェが付いていたであろう車両はカフェのショーケースが車両の端に寄せられ、長椅子が窓際に備えられただだっ広い車内になっていた。

列車はソウル駅を出発すると、普段はKTX江陵線しか走らない高架線路を走行して京釜線を反対側へオーバークロス、龍山駅をゆっくりと通過して京元線(京羲・中央線)に入り、真っ暗な漢江を眺めながらしばらくソウルの市街地を走行して清凉里駅に到着。
この駅でほとんどのシートが埋まり、乗車率は9割ほどになった。

しばらくするとスタッフがやってきて、私の為に英語で説明をしてくれた。名簿を見て私が外国人であることを把握したスタッフの配慮に大変感謝したい。

その後、私の後に座っていた老夫婦が「고구마(ゴグマ)」と言いながら紙コップに入ったサツマイモを手渡してきた。耳に慣れた言葉に勝手に脳内で変換され「小熊」と言っているように聞こえたがゴグマとは韓国語でサツマイモのことで、外国人&一人である私を気遣ってくれたのだと思う。感謝の言葉を述べてサツマイモを頂いた。まだ温かく美味しかった。

ここからは中央線に入り早朝の薄暗い濃霧の中を列車は進んでいく。楊平、原州と停車していき、ほぼ満席となった。原州を含む途中堤川までの区間は2020年に廃線が決まっている区間であり、新しく直線高速化された線路に付け替わることになっている。
この区間は韓国で最も高い鉄橋「百尺鉄橋」やトンネルループ線も存在する興味深い区間だ。

堤川でツアー参加者が全員そろった為、改めてツアー行程の案内放送が行われた。堤川からは中央線から分岐する太白(テベク)線に入り、いよいよ太白山の山岳部に入り込んでいく。山を下ってきた最初の大きな駅となる堤川駅には多数の機関車が留置され、駅の西側には広大なヤードが広がっている。

アジアセメントの堤川工場をわき目に、アメロコと8両の客車で構成された臨時列車は太白へ向け上り始めた。


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最初の観光停車駅は「田(チュジョン)駅」
ここは韓国内で最も標高の高い駅として知られており、構内には855mと書かれた石碑が立っている。1973年に開業した当初は太白に当時複数あった炭鉱から無煙炭を運び出す為の駅だった。旅客取扱いも行っていたが、1995年に中止、貨物の取り扱いも2017年に中止され、現在は観光列車や臨時列車が停車するのみの駅となっている。
駅の裏には少し広めの敷地があり、おそらくここの留置線で積み込み作業を行っていたと思われる。
駅の表側には観光列車用と思われる商店がいくつか並んでおり、列車が到着した時のみ営業するようなスタイルのように見えた。

停車するとぞろぞろと下車し、みなこぞって石碑の前で記念撮影をしている。先ほどのスタッフがやってきて「ここは韓国で最も標高の高い駅です」「ここで写真を撮ると良いです」と英語で説明してくれた。

一応駅としては機能している為駅舎も残されており、中には様々な資料が保管されていた。


列車は田駅を出発すると一転して下りはじめ、機関車もより慎重にゆっくりと下ってりはじめた。ほどなくして太白線の由来となった「太白駅」を通過、一度だけ訪れた事があったが、この町は太白近辺の観光基地の役目も担っているようで、バスによるシティーツアーが駅前から出発する。

時刻はお昼を回り、昼食用の弁当が配られた。ごはんとおかずが別となったかなり立派なものでボリュームもある。今回使用されたツアー列車にはテーブルが付いていないので、膝の上に載せてうまくバランスを取りながら食べる必要があるのだが、みな器用に食べていた。韓国で列車ツアーに参加するには、揺れる車内で弁当を手に持って食べるスキルが必要になる。

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しばらく下るとさらに速度を落とし、嶺東線とのデルタ線を通過する。通常、清凉里方面からの旅客列車は江陵方面に行く列車しかない為、嶺東線とのデルタ線は北側へ分岐する線路を通る。しかし今回の次の停車駅はこのデルタ線を南に下った先にある為、南側へ向かうデルタ線を通過する。ここを通る列車は貨物を除けばこのような臨時の観光列車くらいしかない。貴重なデルタ線からのわずかな眺めを堪能するとすぐに栢山駅構内を通過する。

太白線はここで終了、ここからは嶺東(ヨンドン)線を下っていく。

太白線の山岳線としてのイメージは、大きな山を大胆に上っていくスケールの大きな路線で、標高が高い為大変眺めが良い。車窓にはたまに遠くまで見渡せる景色や唐辛子畑が広がる。一方嶺東線は同じ山岳線ではあるがまったく別の性格を持っており、渓谷鉄道のように切り立った狭い谷を縫うように走る。車窓には間近に渓谷と断崖が広がる。

ほどなくして太白地区の石炭搬出拠点であった「鉄岩(チョラム)駅」を通過する。この駅は駅前に古い建屋を活用した炭鉱博物館があり、当時炭鉱の街として栄えていた鉄岩の街を垣間見ることができる。駅の裏手は大きな堆積場のようになっており、様々な施設も残されている。映画のロケ地としても知られており、人気のスポットである。

さらに南下し2つ目の観光停車駅「承富(スンブ)駅」に到着。

1956年の嶺東線開業と同時に開業。一時期は信号所に格下げとなったが1999年から観光列車が運行を開始し、週末メインで運行されるソウル発のOトレインや、嶺東線内を走るVトレイン等観光列車も停車する。Vトレインは駅前マルシェの利用時間を加味した停車時間を設けている。
マルシェと行ってもこじんまりとしたもので、数件の屋台が並ぶ程度だ。しかし乗客はこぞって屋台に温かいおでんを買いに向かう。
ここでは1時間半ほどの自由時間が設けられ、駅から延びる登山道に入っていく乗客も多い。
韓国の人々は本当に登山が大好きで、週末の江陵方面へ向かう夜行列車は9割がハイキング目的のシニア層である。

私も負けじと列車を降りて山へ入るも、途中であきらめて引き返す。5歳もいかないような子供まで両親と楽しそうに山を登る姿に、韓国人のバイタリティはこういった所で培われるのだと感じる。老いも若きも健脚だ。おそらく日本のツアーではこうはいかないだろう。目の前に登山道しかない駅で1時間半自由時間ですと言われても8割くらいが車内に留まっている姿が目に浮かぶ。もちろん、そういった行程であることを把握した上でのツアーなので、相応の客層しか応募してこないわけだが…。

食後の運動をした後は次の目的地へ移動というわけで、列車に戻る。反対側からソウル始発の観光列車Oトレインがやってきた。この列車は長時間停車はしない為、下車するお客さんもほとんどいない。この駅は列車以外で訪れる方法が無く、道はあっても太白方面からしかアクセスできない為にかなり不便な駅だ。

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停車するOトレイン


今度はVトレインがやってきた。嶺東線観光列車オールスターである。正確には東大邱からやってくる慶北観光列車というのもあるが、この列車は次の観光停車駅「汾川(ブンチョン)駅」に居るハズだ。週末なので嶺東線にやってくるすべての観光列車を見ることができる。

Vトレインはしばらく観光停車をするので、再び駅前マルシェが賑やかになりつつあるのを横目に承富駅を出発した。

次の停車駅汾川には13分で到着した。この駅は、というか街はクリスマス仕様になっている事で有名で、ちょうど訪れたのは12月21日とクリスマス前の週末、駅前では何やらイベントが行われており大変賑やかな様子。
1956年開業当初は林業が盛んだった半島東側の木材を各地へ運搬する為の積み込み駅として活用されていた。当時は鉄道過疎地域の東の蔚珍方面への連絡バスがあり、清凉里方面の列車と接続していた。林業が斜陽化すると駅周辺も衰退したが、2013年にスイスのツェルマット駅と姉妹提携したのを発端に駅をクリスマス仕様に改装、同駅までの観光列車を走らせた所観光客が増加、賑わいを取り戻しつつある。
スイスはクリスマスとあまり関係がないように思うが、こじつけでもなんでも町が活性化出来ればそれにこしたことはないのだろう。

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この日のイベントはかなり規模の大きなもののようで、町はずれには臨時の駐車場も設けられ車であふれていた。
この駅でも1時間半ほどの自由時間が取られた。駅前には出店が並び、ステージイベントも開催されていた。温まる為に出店でおでんを頬張る。

雪は残念ながらまだ積もっておらず、例年であれば駅前の坂道はそりが出来る場所として開放されるはずだった。それでも少しでもクリスマスの雰囲気を出そうと、駅前の植木の葉に雪に模した氷塊を載せて雰囲気を出す等涙ぐましい努力が垣間見える。
雰囲気を作ることに置いて一切の努力を惜しまないスタンスは大変好感が持てる。


16時に汾川駅を出発。

山を下りきると松茸で有名な街「奉化(ボンハ)」に出る。10月には川沿いに多くの松茸の出店が出る。日本からケース単位で買いに来る人が居るほどの名産地だ。しばらく平坦な地形を走ると市街地に入り、まもなく栄州(ヨンジュ)に着いた。ここでは列車の進行方向が変わる為、機関車牽引列車であるこの列車は機関車を反対側に付け直す「機回し」の為20分程停車した。
2017年までは栄州駅を通らずに中央線ソウル方面へ分岐するデルタ線があったが、現在は撤去されてしまっている。

汾川を出て1時間半、最後の観光停車駅、中央線の「豊基(ブンキ)駅」に到着。

この町は朝鮮人参の名産地として知られており、五日市も開かれる。
既に日は落ちており12月の韓国の寒さを身を持って思い知る事となった。ここで各自自由夕食という事になり、おのおのが街へ市場へ繰り出していく。豊基は人参の他にも納豆が有名で、納豆鍋は栄州の郷土料理となっている。せっかく豊基に来たのであればこれを食べないわけにはいかないと、駅前の賑やかそうでいかにもなお店に入った。大豆を取り扱っているお店らしくショーケースには各種味噌が並んでいた。トマトと書かれた味噌が気になった。濃厚な味が想像できる。

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店の中は独特な発酵食品の香りが漂い、人によっては長居が困難かもしれない。肝心の食事は見た目こそ通常のテンチャンチゲのようではあるが、味は納豆のコクというか、程よく主張してくる感じが心地いい。
同じツアーの参加者も後から続々と並びはじめ、食事を終えて店を出る頃には店の前に待ち人が溜まっていた。

豊基駅はこの先、列車が小白山脈を越えていく為の準備を行う為の駅でもあった。構内には大きな給水塔が残り、蒸気機関車も展示されている。

19時半、豊基駅を出発。中央線をソウル方面へ登っていく。洞窟で有名な丹陽(タニャン)を過ぎ、堤川に到着して太白一周が完了した。その後は中央線を終着ソウルへ向けて走るだけである。

往路と同様に原州、楊平、清凉里と停まり、22時50分にソウル駅に滑り込んだ。

ソウルの街中の車窓で言えば、京釜線よりも中央線の清凉里~ソウル間の漢江沿いの景色が大変よい。


到着後、そのまま解散となった。




旅行の様子はこちらのチャンネルにて順次公開していきますので、よろしければご覧ください。チャンネル登録頂けますとありがたいです。

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